消去
伊月りさ

きみの合鍵を駆使する
ひとつの過去が
忍び込むその、とき

怖れているはずなのに
無抵抗に引きずり込まれる、混同する
きみの残酷さは少年で
叫ぶ
わたしの幼さはあまりに過去で

追い出して
そのドームならわたしが
どこまででも牙を生やして
壁際、押さえつけて
噛みついて
噛み切って
噛み殺して
ここになにも残させるものか、と
遠い天井まで跳ね上げる
氾濫する衝動がある
いま、この
暗闇は無様

支えきれないからもう
消してあげてよ、だなんて
優しいひとが欲しいのなら
有機物にするのだろうが
わたしにすれば
きみを一緒に消すことも
厭わないだろう
から
なんにも残らないよ、と
子どもの忠告


自由詩 消去 Copyright 伊月りさ 2008-10-08 00:34:23
notebook Home 戻る
この文書は以下の文書グループに登録されています。
落下光