用法
霜天

ノックされた窓を開けると
季語が突然入りこんでくる
飾るべき言葉の、持ち合わせがないので
自分勝手に寂しくなってしまう
決められた五線譜に決められた音をのせて
決められた拍手が返ってくる
そんなことを望んだような
望まなかったような


間違えている
そう気付きながら今日も、生きた
時々の、息継ぎ
絡まりあった路線図の中を
できるだけ簡潔に泳いだ


便箋と鉛筆だけの手紙が届く
夜を切り抜いて
ドアの横のスイッチで朝に塗り替えた
それだけを同封して、返信すると
あちらこちらから言葉が届いた
混ぜ合わせ、積み上げてみると
自分のかたちに見えた
使い道はそれでよかったのか
いまだに返事は来ない


間違えている
そのままで、その日も生きた
自分のかたちの言葉は崩れて
また新しく積み上がろうとしている
きっと、それでよかったのだ、と
飛ぶ鳥に手を、振り返してみる
それだけは確かなことで
間違えようもなかった


自由詩 用法 Copyright 霜天 2008-10-07 23:47:57
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