用法
霜天
ノックされた窓を開けると
季語が突然入りこんでくる
飾るべき言葉の、持ち合わせがないので
自分勝手に寂しくなってしまう
決められた五線譜に決められた音をのせて
決められた拍手が返ってくる
そんなことを望んだような
望まなかったような
間違えている
そう気付きながら今日も、生きた
時々の、息継ぎ
絡まりあった路線図の中を
できるだけ簡潔に泳いだ
便箋と鉛筆だけの手紙が届く
夜を切り抜いて
ドアの横のスイッチで朝に塗り替えた
それだけを同封して、返信すると
あちらこちらから言葉が届いた
混ぜ合わせ、積み上げてみると
自分のかたちに見えた
使い道はそれでよかったのか
いまだに返事は来ない
間違えている
そのままで、その日も生きた
自分のかたちの言葉は崩れて
また新しく積み上がろうとしている
きっと、それでよかったのだ、と
飛ぶ鳥に手を、振り返してみる
それだけは確かなことで
間違えようもなかった