学校に行きたい
パラソル
校庭の上を二匹の犬がじゃれあっている
雲から目玉がずり落ちて魚のように転がっている
喫茶店に入るための口実
そこで見たものは10年前に見えなかった双眼鏡に写っていた
武田鉄矢のような男が問いかける「君は双眼鏡に写った校庭が見えていたかい?
そこに走っていた女の姿が見えたかい?夢のしっぽをつかんでいたはずだった。
それは砂のように消えた。
つぶれた目で何を見たかい?」
立ちつくす
まわりには砂が広がる
かつてそこは学校と呼ばれていた
スーパーで二本足のいかを買う
日本海からやってきた彼の姿は
顔も思い出せない学校に住んでいた人間の体に似ている
米と肉
その間にはさまるものをついに知ることはなかった
シャッターばかりがぼんやりと下がっている商店街の中で
ひとつだけ暗い光が見えた。
いまどきめずらしく背中のまがった女がランドセルを売っていた
看板を見ると「学校」だった。
「これが学校だったんだ!
おれのさがしていたはずの学校はここにあったんだ!」
叫びながら、「学校」に入っていった。
しかし
女は歯のない口から一言も発さない
アーケードの中で、
世界のはしっこにいた。