学校に行きたい
パラソル

校庭の上を二匹の犬がじゃれあっている
雲から目玉がずり落ちて魚のように転がっている

喫茶店に入るための口実
そこで見たものは10年前に見えなかった双眼鏡に写っていた
武田鉄矢のような男が問いかける「君は双眼鏡に写った校庭が見えていたかい?
そこに走っていた女の姿が見えたかい?夢のしっぽをつかんでいたはずだった。
それは砂のように消えた。
つぶれた目で何を見たかい?」

立ちつくす
まわりには砂が広がる
かつてそこは学校と呼ばれていた


スーパーで二本足のいかを買う
日本海からやってきた彼の姿は
顔も思い出せない学校に住んでいた人間の体に似ている
米と肉
その間にはさまるものをついに知ることはなかった

シャッターばかりがぼんやりと下がっている商店街の中で
ひとつだけ暗い光が見えた。
いまどきめずらしく背中のまがった女がランドセルを売っていた
看板を見ると「学校」だった。

「これが学校だったんだ!
 おれのさがしていたはずの学校はここにあったんだ!」
叫びながら、「学校」に入っていった。
しかし
女は歯のない口から一言も発さない


アーケードの中で、
世界のはしっこにいた。 


自由詩 学校に行きたい Copyright パラソル 2008-10-07 22:25:05
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