常世

流れてく
何か 善いもの

流れてく
何か 悲しいもの

流れてく
何か 愛しいもの

緑色の深い河が
ごうごうと常世とこよの国へと流れてく

お別れの日に
笹舟に乗せてそれを流した
もう二度とあえないことをおもって
ほんの少しだけ泣いた
その涙さえ 飲み込んで
どくどくと河が流れる

(何もかもが流されていきますように
何もかもが流れ着きますように)

お祈りの言葉はひとつづつ
こぼれて おちて また流れる
さらわれて 浮いて沈んで 見えなくなって

ぱらぱらと そして どくどくと
流れてく 流れてくよ もう、追いかけることもできない

遠く水平線の向こうまで
それらが追いやられたのを
手を振って 見送って
わあわあと 泣いた

お別れの日とさえも
ああ もうお別れしなければいけない

河は

だぶだぶと 声を上げる


(何もかもが流されていきますように
何もかもが流れ着きますように)

(何もかもが流されていきますように
何もかもが流れ着きますように)

(何もかもが流されていきますように
何もかもが流れ着きますように)


自由詩 常世 Copyright  2008-10-07 20:09:56
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