異次元
1486 106
35646歩
35647歩
気が遠くなるほどの数を数えながら
ひたすら階段を上り続けている
誰もいなくなった放課後で
開かないはずの扉を開けた
そしてこの世界に迷い込んだ
35466歩
35467歩
途中で数えるのを止めてしまえば
またふりだしからやり直し
何故か直感でそう思った
だからひたすら数を数える
36456歩
36457歩
時間や空間といった概念は
この世界には存在しない
だから上に進んでいるのか下に進んでいるのか
進んでいるのか進んでいないのか戻っているのか
本当のところ分からない
ただ勝手に足は動いている
ただ勝手に数を数えている
この世界に自由という概念はない
自分という概念も失ってしまいそうだ
34656歩
34657歩
階段を上り続けながら
色々なものとすれ違った
目が一つしかないウサギ
手と足が逆さまになった人間
首の無い赤い服の少女は
行方不明になった2年3組の転校生だと
会ったことはなくてもそう感じた
自分もいつかはああなってしまうのかもしれない
35646歩
35647歩
この階段を上りきることはないと
もうずっと昔から分かっている
自由という概念を失ってなお
意識が消えることはない
それが唯一の苦しみに他ならない