『Rapid Train』
東雲 李葉

夜半に君はやって来て「最後の列車に乗れ」と言う。
あまりに突然なものだから頷くことしか出来なかった。
最後に会ったのはいつだっけ。なんだか遠い昔みたいだ。
あの時君は何て言ったかな。ダメだ何にも思い出せない。
その時そこは昼過ぎで。僕はどこかに向かっていた。
けれどそんなのどうでもよくて。ただただ夜が待ち遠しかった。
砂嵐により画面が変わって、僕らは夜のホームに立つ。
星屑涙と零れるような綺麗な綺麗な空の下、
美しいとは悲しいものだと君は遠い日々を見つめてた。
本日最後の古びた列車は行き先なんて示してなくて、
「宛てもない旅がいいさ」と笑いながら飛び乗った。

ラピッド・トレイン 僕らを乗せて。加速してゆく青い彗星。
星の欠けらが飛び散る海を。光が消えてく深い闇を。
越えて夢は止まらない。このままずっと醒めないで。

ラピッド・トレイン 連れ去って。君とこのまま消えてしまいたい。
煌めく星の輝きを忘れぬように寄り添って。
夢の列車に乗らずとも君に会って触れ合いたい。


目醒めてしまった明け方は冷たいばかりの雨の日で。
あまりに突然終わったからさよならさえも言えなくて。
最後に君に会ったのは言葉も凍る雪の夜。
あの時君が言ったことを夢の中で確かめたのに。
「    」肝心なところがノイズに変わる。
けれど本当は諦めかけてて、ただただ君に会えてよかった。
僕らだけの列車の窓には孤独な惑星が映っていて。
星屑涙と混じりあい幾つも銀河が生まれていた。
喜びとは生きてるものだと君は瞳に星を映した。
レールを持たない古びた列車はやがて速度を落としながら、
一際高い汽笛を鳴らして僕を駅へと連れ帰る。

ラピッド・トレイン 置いていかないで。加速してゆく青い流星。
涙は星に変わらずに熱く頬を流れて落ちる。
止まらないで僕も乗せて。どうか夢よ醒めないで。

ラピッド・トレイン 連れ去って。君とこのまま消えてしまいたい。
光の中を列車は走る。君は笑って手を振って、
最後の言葉は汽笛に紛れて僕はホームに取り残された。

ラピッド・トレイン 君は連れ去って。
僕の心は独りぼっちで孤独な宇宙を彷徨っている。


自由詩 『Rapid Train』 Copyright 東雲 李葉 2008-10-07 10:55:40
notebook Home 戻る