煙草の煙
じゅらいち
あなた
子供作るからね
まぐあいのあと
Sは言った
「垂れてくるよ」
Sの肉は弾けていた
三週間後
妊娠が判明した
百発百中じゃない!
あんなに嬉しそうな
Sの顔 見た事ない
もう 嬶の顔してた
俺は二十六歳だった
性欲に燃えていた
我慢しきれずに
一週間後
Sの生殖器から出血した
鈴鹿に仕事に行っていた
ポンプの修理をしていた
ポケットベルが鳴った
会社に電話した
流産 したそうだ
アパートに直帰した
Sは布団に入っていた
虚ろな眼の色してた
俺も彼女の布団に入り
膣洗浄 痛かった
もう子供は要らない
俺の胸にすがりついて
慟哭した 俺が悪かった
刀葉林地獄に堕ちた
十年後
Sと離婚して
半年後 電話した
子供がいたら
私たち離婚できなかったね
良かったね
Sは宗教ニンゲンになっていた
白い靄のような煙
俺が放った煙草の煙
拡散して
宙に消えゆる煙草の煙
俺の心は干涸びた
灰色の骸となった
河原に打ち上げられた
鮭になった
驟雨が降りよる
俺の肉体に染み込む
水子の魂 どこ行った
女の子だったみたいだ
そんな気がする。