流れ雲
松本 卓也

生きているだけで
ただ価値があると言う
戯言を口にしていた頃から
僕の中での世界の価値は
どれだけ値札を上げたのだろう

ほんの少し前までは
掴もうと手を伸ばした雲も
冷えた風に早々に流されて
一つ一つと見失う

捨ててきたものと同じくらい
手に入れたものがあるのなら
煙草を吸い込むだけ縮んでいく時間に
少し位は悔いていられるだろうに

普段は笑っていれば良い
叱責でもされたのならば
申し訳なさそうな面をして
俯いていれば良い

そうやって抱えた不満も
何処にやる事もできぬ不安も
独り抱えているだけだから
まだまだ身軽に過ごしていける

クールビズで居続けるには
褪せた街から吹き付ける風が
冷たすぎやしないかな

久方ぶりに問われた意味に
答える言葉も無くしたままで
明日は何処まで流れようか


自由詩 流れ雲 Copyright 松本 卓也 2008-10-06 22:41:00
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