埋葬
伊月りさ

わたしを捨てた手のひらが
わたしを撫で続けるので
土になっていく

右足は季節をかいくぐり
左足は罠にかかるので
台無しになって
あやすように
腕は八本になる

ドアーを
ひいて
傘を
だきながら
ピアノを
あけて
わたしを
さす
あの子を
わたしが、
残りの二本で
あの子の
首を絞めたいと思う
きみの前の後ろから切り落とした
い、
願望や
一万日に満たない沈殿物質を
丁寧に食べ尽くして知っていく
上位の衝動を養分とする
虫がたくさん循環している
この熱を
この深さを
はかりかねていることがわたしを満たす

月の光は間に合わないくせに
信仰をしたいきみ
味わい方を決めて
埋めれば救えるのだという安易な信仰が
繁殖している
この森に
わたしはなくなっていくのだ
と、夜の錯覚をした
ひと掴みの土の分だけ
肩が少し重くなる


自由詩 埋葬 Copyright 伊月りさ 2008-10-05 23:27:40
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