白痴
智鶴
線路を白く覆う雪と
目の前を白く曇らせる吐息と
貴女が歌った古い歌が消えていくように
冬の前に確かに聞いたオルガンのように
未だ、罪悪感を知っていた日を懐かしむ影が
昨日のような未来に嘘を重ねて
泣いて気付いた日々の儚さを
知ってしまった冬の終わりを
一秒の奇跡だけ思い出させて
一瞬の温もりだけ思い出させて
冬の風には、窓を叩く風が
僕の抜け殻を殺して
幻想まで連れていく
十二月の雪が手を冷やして消えて
警笛の音に、懐かしさも消えていく
きっと色々なものを知りすぎていたから
君は死んでしまうまで笑わなかったんだ
何も知らない白痴のままで
全て捨ててしまえばよかったのに
僕のように
ずっと笑っているままで