『お』
フクロネヅミ

成長期のはじまり、
おっぱいの お は おんなの子のものだった

ゆるやかにカーブがかった
右上がりの
短くも純粋な時間

いつだって
おんなの子のはにかむ口角に似ている


思春期のはじまり、
おっぱいの お は おとこの子そのものだった

ずっとおんなの子の
足や、かたや、それから

ボタンがふたつはずれた
シャツのスキマが

夜になれば
悩みにも似た興奮になってしまうから
からだを少しまるめて

からまる先をもとめるような
そんな形状に変わってしまう



おとなのはじまり、
おっぱいの お は おとことおんなに似はじめていた

未来をつつみこむような
腕を、母性を

少しずつ覚えはじめたばかりか
ときどき、ちいさくなりすぎたり
おおきくかまえすぎたり


まるで無器用な愛そのもの

やさしくするたび、美しくなろうとする



そして、おっぱいの お に
ちいさな命が宿り
かわいい やや の ものになった



自由詩 『お』 Copyright フクロネヅミ 2008-10-05 18:10:04
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