6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
西日 茜

すとんっと落ちた釣瓶の井戸に響くあっという間の出来事の
外はもう闇
急に冷え込む閉店準備の店内で
夜には強すぎる冷房で涼む集積回路
ホッとしながら「もっともわずかな安堵の時期である」と言った


街はきっと
闇と闇の間に静まるモノたちを休ませようとはしない
働いている時間だけが消耗していくのだ
ビルの裏にある巨大なゴミ箱に
深夜に分別のされないまま溶鉱炉へと急ぐモノたちが居ようと


秋の日は釣瓶落とし
里山の熟した柿の色は赤
さらけ出したカロチノイドはやがて褐色に変わる
はらはらと一斉に進む最後の瞬間まで止めることはできない
生物と無生物の隙間を埋めるようなはっきりとした区別
それは地面に落ちて土に還るときを待つ想いに似ている


光合成すらしていなさそう
君の薦める詩人から、いったい何を学んだというのか…
過去は葬られるから美しいのだ
もうすぐ訪れる冬に死んで春にまた生まれよう
子を産み落とすように、君も言葉を生むのだろう


自由詩 6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2 Copyright 西日 茜 2008-10-05 13:38:06
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