光速の美夏
石田 圭太
はねを生やして飛び立とうとするのは
なにも言葉だけじゃない
重すぎる心臓を
あかく吐き出しながら
お前のことを絵にするのは
いいかげんにしなくちゃね
お前はそう、
ひっそりとやさしいに近付く
それは誰もきづかないうちに
草の根が育つような
ほんの小さな出来事として
もう、
すっかり目は潤んでいて
お前はひっそりとやさしいに近付く
ふるくから息づいていた
お前のなかの
柔らかい種は
+
てんくうをみろよ
一億のちいさな
ちいさなほしが
俺達に向かって降りてくる
あれは、
死ぬまえに在った
生きるまえに在った
答えのまえに在ったもの達だ
道路に落ちていきそうなもの達は
両手でいっぱいに抱えろよ
心臓をほしぼしでいっぱいにして
愛しながら覚えた道を
ちぎれるように
いけよ
お前は音楽で
目は眠気がかっている
指先が温かくなるような歌を
閉じて
始まりの声に耳を澄ませば
眠れる
閉じていたこころが開きだして
守られることのない約束は
出来る
音楽が死んだらきっと悲しい
そう言って
もう、切る指は無くしてしまった
+
音が枯れる日がやってくる
喉が枯れる日がやってくる
耳も(目も
口も、すべてが
(やわらかく閉じて
絵が枯れる日がやってくる
世界はもう
ずっと不思議なままで
お前は今
その世界よりも深く眠っている
夢の中で生かされている
風の期待だけが
昨日使ったさよならを、
初めてのように(やまびこのように
見送りながら
(とりのこされて
(どこにも、
聞いたこともない山々や
見たこともない街並みを
ゆく
(どこまでも、
突き抜けて、心臓を
ゆく
光の香りだけがする
※2010年加筆