野と月(夜と獣)
木立 悟






空の火と唱斬る光ひらめいて水銀の音ひもとくもののふ



糸車投げ与えられる糸車ひとりの冬に燃されゆく夏



亡霊に起こされ散らばる骨を視る未明の標ゆらめく標



さやもなく降る雨のなか投げ出され或る日誰かに拾われし剣



ひと文字に断たれて生まれくりかえしまたひと文字に断たれる鴉



窓の核窓の芯からほぐれる火今日を彼方へ敷きつめる野火



夜が夜星が星へと狭められ空はひとつの手のひらを



三十と三十一の違いよや今も響きゆく二四六九にしむく十一さむらい



太陽を齧る月から迷い出て干りつく如き星の艶花あだばな



野に光る欠けた刃を埋めるのは夜の虎から降りそそぐ闇

















短歌 野と月(夜と獣) Copyright 木立 悟 2008-10-03 20:16:07
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