花びら空に消えた
霜天

いつか語っていた景色だったら
巣食っているのは本当なんだろう
少しだけ多くの時間をかけて
誰よりも歩いた気分になれる

腕時計、を外して
その跡を順番になぞる
縛られた指先が千切れると
世界にしゃがみ込むように見えなくなる


巻き戻したままの時計の針なのに
信じたままで、飛び出す
花びらを千切って、空に投げる
どこかの国のおまじないみたいだ、と
重ねるように繰り返してきたことに、呆れて


花びら、空に投げたままに消えた
夏の淵をなぞるように消えた
黄色い花びらの白い筋跡を
ただ欲しいだけだった

ガードレールと空の間を泳ぐ
両手を広げてつかむように泳ぐ
ずっと夢見ていた淡い指の先
どれだけつかんだって、いつも、からは
遠くへ離れていけない


その、景色が
吸い込むように溶けたって
花びら空に消えたって
ここに、離れていけない


自由詩 花びら空に消えた Copyright 霜天 2008-10-02 23:20:06
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