花びら空に消えた
霜天
いつか語っていた景色だったら
巣食っているのは本当なんだろう
少しだけ多くの時間をかけて
誰よりも歩いた気分になれる
腕時計、を外して
その跡を順番になぞる
縛られた指先が千切れると
世界にしゃがみ込むように見えなくなる
巻き戻したままの時計の針なのに
信じたままで、飛び出す
花びらを千切って、空に投げる
どこかの国のおまじないみたいだ、と
重ねるように繰り返してきたことに、呆れて
花びら、空に投げたままに消えた
夏の淵をなぞるように消えた
黄色い花びらの白い筋跡を
ただ欲しいだけだった
ガードレールと空の間を泳ぐ
両手を広げてつかむように泳ぐ
ずっと夢見ていた淡い指の先
どれだけつかんだって、いつも、からは
遠くへ離れていけない
その、景色が
吸い込むように溶けたって
花びら空に消えたって
ここに、離れていけない