なつ、と
あやさめ


あついことは暑いことだと夏はただ言って
10メートル先の水たまりを勝手に縛りつけた
彼はどこにも行けない身体をしているのに
もう一人の彼女がいつまでもそばに寄れないようになっているのは
ただ記号を知らないでいるだけだから


暑いことがあついことだと彼はただ言われて
目の前にある靴底を地面に塗りつけていた
固定された脚はもうすでにやつれた蜘蛛の子供
明日のプールを今から楽しみにしていたのに
ぼくらはこれからも外に出かけられない


あついことはただあついことだと
言われてしまうから行ってしまう
雪解け水もとうの昔に消えてしまったから
必然的に泣きたくなるほど水不足がやってくる

 去年の好き勝手にばら撒かれた音や言葉の先で
 突っつかれたのはスケープゴートとして活躍したサインたち
 今年は逆の位置で現れた等高線の中でも
 好き勝手にばらまかれるのは同じもの


暑いことはタダ暑いことだと言われるので
正しさを抱えた別の記号たちはさっきから何もしようがない


自由詩 なつ、と Copyright あやさめ 2004-07-30 23:00:07
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