ちゃんと御飯だった
atsuchan69

胸の想いは、
薔薇色の珊瑚だよ

だから貧乏だなんて
口が裂けても
絶対に、
言ってはいけないよ

こんなふうに、
今は。
志のある人なら誰でも
・・・・とても
苦しい、時代だから

母ちゃんはそう云って
ジャガイモを三つだけ買った
お肉がないからさ、
えーと、「じゃがじゃが」だよ
よく噛んでお食べ

うん、母ちゃん、
バターと醤油がいい味だしてる
鉢植えの香菜を刻んだ、
ちょっぴりスパイシーな隠し味も
なんだか大人の感じ

――美味しいかい?

父ちゃんにも
ぜひ食べさせたいナ
きっとよろこんで、
またビールをがぶ飲みするよ

世界じゅうの誰よりも尊い
僕の母ちゃんが作った
すこし味が濃いみたい、だけど
ホクホクしてあったかい
まごころのたっぷり染みた味だ

御菜はそれだけ。
でも、ちゃんと御飯だった

飾り麩の味噌汁付きで
さらに食後のデザートみたく、
黄色い沢庵がふた切れ
青磁の小皿に載って

今日あったことを
ぜんぶ母ちゃんに話すと、
なんだか安らかな息を吐(つ)かせる
芳ばしい香りの立つ、
父ちゃんの湯呑を掴んで
――あちっ。
なんて熱い焙じ茶だろうか!

月夜の静寂があたりを包み、
草葉の下では蟋蟀の鳴く

やがて母ちゃんも
円い卓袱台に座ると、
片割れの小さな湯呑茶碗を
暫く、じっと見つめ・・・・

白くか細い指で
そっと 握る、
いくぶん肌寒い神無月の――
頗(すこぶ)る細やかな、
ささやかな 夕べ





自由詩 ちゃんと御飯だった Copyright atsuchan69 2008-10-01 18:49:37縦
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