ゆれるショート
オイタル

グラブが白球をはじく
グランドがしわくちゃの絵になる

天上にぶら下がり
ゆれるショート

(大体がこんなもんだ
 今朝も天候が不順でね
 まあ いいときも悪いときもあるとは言いながらね)

球場奥の蒼白な巨大スコアボードはのけぞって反転し
空も裏返って雨をはらむ
静かに球場を満たす華やかな退却

グラブが白球をはじく
ゆっくりねじれて登る坂道で
悲しい金縛りに出会ってしまった私たち

遠くゆっくりと
伸びていくファースト

ピッチャーはむろん首を振り
キャッチャーももちろん首を振り
センターもやはり

(コーヒーをいただけるとは
 驚きだ 以前はね
 寒いまんまで だれということもなく)

キャッチャーの指先から長く地上をのびる線分は
ホームベースとうなだれるカラスの嘴と西に崩れた太陽とを貫き
第一象限から第二象限に渡って次第にその回転を速める球場
風を受けてはためくショートは未だに
弾いたボールを左の肩に預けて永い
永い眠りへと
落ちていく最中である


自由詩 ゆれるショート Copyright オイタル 2008-09-30 18:07:06
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