胸の前で祈るように携帯を
たりぽん(大理 奔)
今夜の月は
半分しかないのに
風力発電の三枚羽根に
砕かれている
居場所がなくて
ぐるぐると、さまようものも
照らし出されれば美しいのだろう
今日も祈っている
風車越しに月を掴もうとすれば
手首は落ちるだろう
その時、染まるのは
羽根だろうか、月だろうか
僕の服だろうか
こんな日は太鼓の音が聞きたい
大きな和太鼓の
ゆっくりとした激しさで
ふるえたい、おびえたい
今夜、照らされることもなく
居場所もなく、ぐるぐるとさまよい
携帯電話を両手に小さく震えている
液晶の篝火はとても小さくて
口元だけをちいさく
とても紅く照らすだけで
今日も祈っている