たぶん、それを愛とは呼ばないだろうけど
涙(ルイ)

強くなれなくたっていいじゃないか
弱虫のまんまだっていいじゃないか
みっともなく泣いてばかりいたって
いいじゃないか もう

貴方がいなくなってしまう
ただそれだけが怖くて眠れない夜
そばにいるはずの貴方を
幾度も幾度も確認してしまう
強く強く 君の手を握り締めすぎては
貴方にあきれられてしまうけれど


ずっとこうしていられますように


臆病で淋しがりやで甘ったれで
ひとりじゃどうにもこうにも
うんともすんともなんとも
ままならないボクだけど
貴方がいなくなってしまっては
あたしは ほとほと
困ってしまうから



愛という名のもとの暴力と支配の中で育ったあたしは
他人のやさしさの中に
いつでも偽りを見つけ出してしまっていた
どうせ誰も彼もあんたもみんな
あたしから去ってしまうんだろって
だから必要以上に近づかないようにしてた
ひとりでいいって 
ひとりでいたほうが楽だって
そんなふうに自分を納得させて
生きていた

自分のことなのに
なんだかいつも他人事みたいで
どうにでもなれって投げやりな気持ち
こんな気持ちで
あと何十年も生きていかなきゃならないのか
もううんざりだ
死んでしまおうかな
でもそれさえもめんどくさいな
ほんとにどうでもいい気持ちだった
いたずらに自分の心をもてあましてばかりいた
そんなとき
そう そんなときだったんだ
貴方の詩を見つけたのは

貴方の詩の言葉一文字一文字は
深く深くあたしの心をえぐった
なんでこんなにも
この人の言葉に惹かれるんだろうって
貴方の言葉を夢中になって読みふけった
貴方が発する言葉はとても痛々しくて
目を背けたくなるようなそんな現実を
容赦なくあたしの目の前に突きつけてきた
でもそれは貴方の痛々しさに目をそらしたかったんじゃなくて
自分自身の現実に目をそむけていただけだってことに
否応なく気づかされたんだ
そしてまた君も あたしと同じように
同じように他人に絶望している人なのではないかと
そう思ったんだ


あたしはすべてを話した


貴方はあたしの話を黙って聞いていてくれたね
そして「お前は何にも悪くない」って
痛いときは痛いって声に出していいんだよって
時には手放しで自分を許してやっていいんだよって
そう教えてくれた
そして これからは俺が
お前の両親や兄貴やそれから
お前の目の前から消えていった奴ら
そいつら全部の代わりに
強く強く抱きしめてやるって
何度も何度も 繰り返し繰り返し
噛んで含めるように
やさしく強く云ってくれた

生まれて初めて 心底泣いた
涙で溺れて死んでしまうのではないかと
そう思うくらいに
泣いても泣いても涙があふれて止まらなかった
貴方はあたしが泣き止むまで
ずっとずっと手を握っていてくれたね

貴方と二人 ベッドにもぐりこんで
冷え切った体を互いの体温で温めあいながら
深い深い眠りに堕ちた

二人同じ夢を見ることなんてできないし
きっと貴方の悲しみを あたしが背負うことなんてできないけれど
互いの求め合った淋しさだけは きっと真実だと思うから



いま あたしは死ぬほど生きていたいと思うよ
明るい未来も希望の光さえどこにあるのか
あたしにはわからないけれど
あたしにとっての希望 そこに貴方が生きていてくれること
だから貴方が生きている限りずっと
あたしもこの世界で生きていたい

どれだけ自分を責めまくったって
どれだけ他人のせいにしてみたって
そこにある自分自身はなにも変わらない

だったらこの際もう居直って
これが自分ですこれで31年と11ヶ月9日生きてきたんだよ
なんか文句ありますかって
そうやってそうやって
貴方の体温を探しながら



そうやって 
そうやって


自由詩 たぶん、それを愛とは呼ばないだろうけど Copyright 涙(ルイ) 2008-09-27 13:30:24
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