sugarmagnolia
水町綜助

 ジーパンに足を通す
 スニーカーを履いて
 アパートのドアを開ける

 ひとつの町に住み
 その町に射す
 乳白色の光の中で
 生活をする

 カンカンと階段を降りて
 ひとのかたちで空気をかき混ぜる
 目尻に緑色の葉や
 自転車の車輪の照り返しが流れて

 町には電車が走り
 雑草の茂った公団住宅は川沿いにたち並んで
 壁はクリーム色をしてる
 夏にはその向こうに
 入道雲がみえる
 彫刻みたいに

 広い道路は目の前を横切って
 または目の前からまっすぐに伸びて
 どこかで曲がって
 どこかに繋がり
 どこかで坂を上がっては
 気落ちもせずに坂を下る

 またそのうちにぐるりと回って
 はらんでゆく外側に沢山の彩りをもって
 それを浮かべた沢山の屋根が見える
 色彩の三原色というのはじつはうそで
 ちょっとしためんどくさがりのついたうそで
 だからあんなにも綺麗にみえたりもする

 ここはすこし高いところで
 よくみえるんだ
 入道雲が彫刻刀で
 細かにかたちづくられているのがわかるぐらい
 道路の上から
 よくみえるんだ
 どこか繋がって
 こんがらがって
 雨の日には
 沢山の水の下に
 沈んだりする
 道の上から


 口ずさんで歩く


 感情を歩道に
 歩幅にそのうつろいを
 靴底のなく音に言葉を
 発音に数え上げられることのない色彩を
 目まぐるしいほどの
 話すべきことにテーブルの向かいの席を
 伝わらないことに疾走を
 荒い呼吸にたくさんの青空を
 それと海原と
 数えきれない夜と
 あくまで揶揄的につかう「奇跡的にすぎない」と
 けれどすべてがかちりと音を立てるように合わさるほんの一瞬に
 結晶するそれは
 それはやはり甘いものだと
 どうしようもなく









自由詩 sugarmagnolia Copyright 水町綜助 2008-09-27 02:53:04
notebook Home 戻る