堕天使の夜飛行
ちりめんチャコ

どんてん曇天
ときどき雨がぱらついて
深夜の暗さに似て
出かけなければという強迫観念からも赦されて
こんな日は
ひとり自分をかきまわす


昨日の君の笑顔
メールの返事もよこさなかったくせに
ずいぶん不躾な笑顔

子どもみたいにバカだね
何の理由づけもなく飛び越えてくる
子どもみたいにバカに
なれるかな私も
バカ一人前空から降ってこないかな
温かい雨みたいに
なんなら近所に配ってもいい


秋風が吹くらしい
今夜は冷えるかな
背中の翼が鳥肌
夜になったら
この前よりもっともっと遠くへ飛んでみよう
雲の上のアルタイルでも目指して

どうしてこの翼は
鳥たちのようではないのかな
この腕は何に使えばいいのかな
小さな優越感と
小さな孤独と
小さな使命感を抱えて
夜空を飛ぶ

地上に降りた意味を
翼をたたんで歩く意味を
ゴミ集積所の掃除当番をきちんとはたす意味を
お腹がすいて食事の支度をする意味を
知らない人を知ろうとする意味を
不機嫌というものの意味を抱えて
夜空を飛ぶ




自由詩 堕天使の夜飛行 Copyright ちりめんチャコ 2008-09-26 15:33:36
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