人工色の巡礼
K・フラグメント

水を恐れる人々がゆく。
プラスチック傘にしがみ付き、
ばらまかれた、
ゴム球みたいに、
震え、慄く、
それぞれの人工色を、
ぶつけ合いながら。

地上への抑圧された憎しみを、
天は暗黒の胸中に、
やっとの思いで閉じ込めている。
だが、見えるだろう。
雲間の閃光を。

やがて着色された波は、
狭い陸橋で、渋滞する。
上るものと下るもので、
流れが止まるから。
動けず、立ち尽くすが、
「はやく帰りたい!」
「わたしの住処に!」
その一つの願いによって、
傘の群集は合成し、
一匹の幼虫になる。

いよいよ天は、
吐き気に耐えられなくなる。
さあ、今、プレゼントが解かれる。
雷のリボンがきらめき、
嗚咽のごう音と同時に、
血の雨が降り注ぐ。

      
詩神のようなくすぐられた、ピンク。
幻覚のマグリット風、ブルー。
手術医師の残忍な、グリーン。
      

わたしは仰ぎ見る。
放電する、明るい空めがけて、
人工色の蛾が一匹、
にわかに飛び立つのを。


自由詩 人工色の巡礼 Copyright K・フラグメント 2008-09-26 02:04:03
notebook Home 戻る