篭城
伊月りさ

切り
開いた
現れた秘密
立ち眩むきみ
ただこれが信頼を顕せるのだと知っているわたし
ここは胡桃です
安心の窮屈です
近寄れないと知っているので
この膝小僧にキスをねだるのです
目配せをする
羽化が見たいのでしょう、
確証のない希望をちらつかせることに全身全霊を賭している
わたしは胡桃なのだからもっと余裕でいいのだが

雨上がりの首筋は安らぎになる
知っている
絡め、握り、噛みつき、等の呪縛
知っている
わたしから始終溢れる狡猾は
狡猾ですが
愛です
全身全霊全生命を賭して
胡桃の堅さを守るのは
おそろしいからです
きみを失うことがわたしを壊すことを知っている

ならば、

わたしの両腕の付け根には痛覚があり
噴出したからには血が通っていた
小指までおりたら確信になるらしく
押し開きたいきみ
の情熱に戦慄
なぜって
見限られる残滓をわたしは知っていて
きみも知っていて
だからそんな笑い方ができるのだと思うと
この頑なさの方向性の
愚か


自由詩 篭城 Copyright 伊月りさ 2008-09-21 09:03:10
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