風の十六羅漢
yo-yo

ひとりひとりの
誰かに似ている石の仏たち
きのうまで近くにいた
でも今日はいない

だれも知らない
過ぎ去った日の遥けさを
石の視界は
どこまで届いていくのだろう

十六人の不動の野手
今では凡フライも飛んでこない
草を踏んで日没まで
ボールを追った少年たちも帰ってこない

日向ぼっこの冬
日射病の夏
草の汁はあまく
葛の根はにがかった

虫とおなじ
地べたを這いまわっていた
ひとも季節も
風のように散ってしまったのか

だれも知らない
まだ来ない日の遥けさを
石のことばは
どこまで消えていくのだろう

そ知らぬ顔ばかり
もう草野球のメンバーも揃わない
みんな
羅漢になってしまったのか





* 羅漢(阿羅漢)とは、仏教の修行を完成し、悟りの境地に達した人のことで、釈迦は死に際し、十六人の高弟(十六羅漢)に教えを広めることを託した、と辞典にあります。






自由詩 風の十六羅漢 Copyright yo-yo 2008-09-21 06:03:25
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風のことば