どろっぷす
ちりめんチャコ

変わり果てたと言うけれど
仰向けのまま
目を閉じたそれは
はて
こんなにも鼻のてっぺんだけがかつての位置を保って
気高く見えるのは
胸が苦しいというよりも
ああ、この鼻の先から
もうあのひとは向こうの高みへスッといってしまったのだな


ひとしずく
ふたしずく

こんなにも若く美しい身空で
喪主などを務めるひとは
ときどき暗い淵に引き込まれて
声を震わせているけれど
たぶん中身はふあふあと彷徨ってしまって
慌しく途切れることなく続く儀式のあいだ
ここにとどまってさえいられない


そうだ夢なのだ
こんなにも花で埋められた階段
揺れるろうそくの火
黒い服を着た大人たち
こんなものは夢だ
もうすぐ醒める夢

おばあちゃんに抱かれて眠る子ども
君たちは正しい
これは夢なのだから
おやすみよ
おやすみよ
眠れるだけ眠るといい
ほら これは
夢の中でだけ使える翼
君たちにあげよう
遠慮せず使っていいよ
高い高い空を目指して飛ぶんだよ
ほら 見えるだろう
夢であっても
君たちの瞳にうつったことは
君たちの中にしっかりたたんでおいて
同じアルバムに残しておいて


自由詩 どろっぷす Copyright ちりめんチャコ 2008-09-20 22:58:04
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