灰
木葉 揺
岩のような物体がある
だけどそれは
確かな存在ではなく
既に灰の塊でしかない
ナイフの先から
たちまち感触が失われ
崩壊する固体
右手に力をこめ前進
わずかに灰をかぶるが
頭上から浴びることはなかった
白い大地に風が吹き
足元の灰の跡さえ奪ってゆく
右手が限界をむかえても
ナイフを放すことはできない
約束はなかった
足の裏に大理石を感じても
熱を奪う他に何があるのか
散らばった灰を足で分け
ゆっくり腰をおろして
太ももで足先を暖める
大地の模様を確かめた後
それをナイフでなぞった
なぞるしかなかった