秋風の町
doon


 忘れ物を 捜して
 どこかへ行こうとしている
 歩いて生きる私は
 何処へ
 問いかけ続けて 何で といい続けて
 揺れている
 この町 あの町で

 風が吹く
 とくに秋の風が吹くと
 探していた何かを舞い上げるような気がして
 ハッと
 透き通った青い空を見上げるのだ
 そうして俯くとき
 消え入りそうな目で
 泣いてみたくなるのだ

 本当はこんな一人でいる事が嫌でたまらない
 何処へ行っても構わないくせに
 何処で死んでしまっても構わない異常事態に
 徐々に寂しさがたまっていく苦しさ
 離れてゆく知人
 私に
 話しかけてくる音さえ薄くなってゆく
 時折聞こえるのは風の音

 あの  心に刺さる秋の風の音

 忘れ物を捜して歩いて
 探していたものさえ忘れて
 町を練り歩く
 一人
 また一人とすれ違うたび
 秋の風が間をすり抜け
 私は一人
 冬の風が来るのを待つ


自由詩 秋風の町 Copyright doon 2008-09-19 05:38:25
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