K・フラグメント

殴れ!
顔面を殴れ!
あのニヤニヤ笑いを、
いやというほど、
八つ裂きにしてしまえ!
今だ、
ついにこの時がきた。
あいつが目の前にいるぞ。
しかも二十年前の姿のままだ。
見ろ、初めて会った時の、
優等生ぶった、蝶ネクタイと半ズボンの姿だぞ!
チャンスを逃すな!
チャンスの逃すな!!
 憎悪と恐怖で、
 少年のおれは震えている。
 あいつは俊敏なガキだ。
 避けられるかもしれない…
臆病者め!
やられっぱなしでいいのか。
腰抜けめ。
やるんだ。
あのゲス野郎を。
今しかない。
やれ!
やれ!

 意を決したおれの拳が、
 ドロドロとした時間の、
 その流動体を掻き分け、
 ゆっくりと、薄ら笑いの、
 あいつの顔面に到達した。
 ついにやった!
 ああ…!

  目覚めたおれの、
  二十年後の、
  力の抜けた拳が、
  スヤスヤと寝息する恋人の、
  愛しい前髪に触れていた。
  撫でられたと思ったのか、
  彼女の口元はわずかに微笑んでいたのだが…


自由詩Copyright K・フラグメント 2008-09-19 01:44:47
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