[恋の煙]
東雲 李葉
想いたいから想うのは個人の自由の範囲内。
だから貴方を愛した。私だけのご都合で。
だけど見返り求めるのは私の自由の範囲外。
それは貴方の権利。だから拒まれた。
恋、なんて厄介なもんは禁止になっちゃえばいいのに。
私は偉い人に決められた名前も知らない誰かと結ばれる。
恋、なんてしんどいもんは潰れてしまえばいいのに。
はじけてしまった赤い汁は苦いばかりの味だった。
私は貴方が好きでした。御覧のようなだらしない女ですが。
貴方を見ていた時だけは少女のようにいられた気がします。
恋、なんて辛いもんは消えてしまえばいいのに。
焦げたりむせび泣いたり、もう疲れてしまったよ。
貴方の自由に侵り込めたら、
貴方が自由にできたら、
貴方の自由になれたら、
何一つ叶わない世界もあるものね。
偉い人が決めてくれた相手は「これも運命だよね」と、
諦めたように笑って私に同意を求めてきた。
彼も赤い赤い汁を溢れさせているから、
余計に悲しくなった私はきっと罪人になるでしょう。
想いたいから想うのは私の自由の範囲内。
だから私だけの都合で貴方を愛したのに。
どうして見返りが欲しいの。貴方の自由が欲しいの。
ずっと近くにいられたら。ただそれだけでよかったのに。
恋、なんて厄介なもんは消えてしまえばいいのに。
熱くて焦げたりむせび泣いたり、煙が目に染みて痛いわ。