叔父の背中
吉岡ペペロ

夏休みぼくは

叔父の自転車のうしろに乗って

少年将棋大会に通った

叔父といっても

いま思うとまだ20代の若者だった

叔父は近所の中高生を呼んで

自宅で家庭教師みたいなことをしていた

夏休み母とぼくはそこに帰省していた

母はそこから仕事に出た

叔父の背中からは

ハチミツの濃い匂いがした

寄せうまなったなあ、とか

うちに帰ったら観想戦しよか、とか

ハチミツを嗅ぎながら

ぼくは叔父の話をきいていた

叔父は父親がわりをしてくれていたのだろう

ぼくは叔父のなにがわりをしたのだろうか

アメリカ留学中

叔父の死の報せをうけた

帰国しなかった

さいきんになってそれを

茫々とした哀切とともに思い出すのだ


自由詩 叔父の背中 Copyright 吉岡ペペロ 2008-09-15 17:44:03
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