瀬戸内海

世界に唯一、病のからだ

手足なければ身を任せ
薬なければ身を委ね

耳を劈く轟音と
視力を奪う光線に
嗚咽は漏らさず
怒りも湧かず

全てはこの子のためだから
我侭坊やは末っ子で
おもちゃが欲しくて駄々捏ねる

手足なくとも歌は唄える
薬なくとも愛は注げる

熱に魘され汗を掻き
びゅうびゅう口から息を吐く
長男次男三男と
次々子供は死に絶える

それでもこの子が傍にいる
我侭坊やの我侭に
姉妹兄弟悲鳴を上げる

この子を愛せるただ一人
世界に唯一、病のからだ

星は君に憧れて
星は君に憧れた

だから星は決意した
君を愛すと決意した


自由詩Copyright 瀬戸内海 2008-09-15 02:22:09
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