中秋の晩に
ねことら
夏のおわり
夜風をあつめて
帆をたたみました
骨のぬるい晩のことです
しん、と澄み切った屋上の一隅で
片付かない、ちっぽけな一匹のままでした
(金属製の月が出ています
(電線に絡めとられて
(冷たいひかりを落としています
わたしは、わたしの話をすることしかできません
言葉でつたえきれないことをつたえるために
今夜もまた、言葉を繰り返しています
屋上はいつも
行き場のない牢屋のようでした
ほそい義足では、あるきだすことも叶わないまま
鉄柵からのぞく
家々のあかりがきれいでした
ひとつひとつが幸せのかたちであるとすれば
わたしにとって、月ひとつあればじゅうぶんでした
お月さまは、わたしにとって
お墓のようなものでした