中秋の晩に
ねことら



夏のおわり
夜風をあつめて
帆をたたみました
骨のぬるい晩のことです



しん、と澄み切った屋上の一隅で
片付かない、ちっぽけな一匹のままでした



(金属製の月が出ています
(電線に絡めとられて
(冷たいひかりを落としています



わたしは、わたしの話をすることしかできません
言葉でつたえきれないことをつたえるために
今夜もまた、言葉を繰り返しています



屋上はいつも
行き場のない牢屋のようでした
ほそい義足では、あるきだすことも叶わないまま



鉄柵からのぞく
家々のあかりがきれいでした
ひとつひとつが幸せのかたちであるとすれば
わたしにとって、月ひとつあればじゅうぶんでした
お月さまは、わたしにとって
お墓のようなものでした









自由詩 中秋の晩に Copyright ねことら 2008-09-15 01:22:26
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