月が消えた後に
Porter

商売女の膝で眠る
彼女は19歳
大人びた手つきで
僕の髪を撫でる

これまでの
どんな女性よりも
優しく

まるで
ビリー・ホリディの
歌声みたいに

時々僕の髪をつまむ
か細い指先

僕は何も言わないまま
淡い照明が
照らし出す

その仕草の
影を見つめている

儚い時間に
馬鹿げた恋をしながら

退屈な喧騒
小便の臭いで溢れた街角

夜を買い
夜に買われる

ただそれだけ

始発が走り始める頃
小さな身体は

ポン引きも
酔っ払いも消えて
静寂を取り戻した通りに
ゆっくりと消えていく

気だるい夜明けの中
ヒールが
アスファルトを打つ音は
白みがかった空に響く

月が消えた後に

彼女は何処に
帰ってゆくだろう

こころまで
夜に奪われなければ
いいのに

こころまで

そんな事を
思いながら

途中で
馬鹿らしくなって
僕は笑った

太陽の奴は
もうすっかり
顔を出してる

うんざりだ


自由詩 月が消えた後に Copyright Porter 2008-09-14 14:12:17
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