雨乞い
雨を乞う

 

 頭痛がするくらいの妄想で大雨の中を掻き分けて迷走中、沈みそうに不安定な僕の手を取って、摂氏三十六度の円を構成した。死のうが死ぬまいが地球は廻ってしまうとか何だったかな。天国に続く神様の方舟はいつだって僕を迎えに来ることもなく、頭上の不透明な雲の上でやうやうと泳いでいく。

 世界の真っ只中でちゃんと選べれば予定どおりに到着するというのに、僕はいつだって間違った道を選び続けるのはどうして?手向けた躊躇いの弔う贐は戸惑いもない涙を見せてしまいそうになるんだ。僕の気持ちを埋葬する、君に集うなど許されない。気丈に張っていた糸が危ういな、尖りながら雨に濡れていた、錆付かないように黒い服を靡かせて、びょうびょうと鼓膜を裂く風の中で僕の声を聞いてくれ。ああ!

 随分と愚かな乞いをしていたよ、僕の詩はいつも巧く届かないで墜落していく。どうせ出せない手紙を抱いて、冷えていく身体を温める術を知らない。大雨の矢が痛覚を甘く刺激する。ごうごう、ノイズになった夜が引力の存在をしたためる。翌朝の寒冷前線、物体の損失率、永劫主義の反復、無垢な振りした踊り子のシューズ。

 呼んだって届かない、だから指先で触れたいと願うけど、ずぶ濡れの皮膚にあるものなんて悲しいだけじゃないか。もう大丈夫、冷えた身体を探さなくて、いいんだよ。

 


自由詩 雨乞い Copyright 雨を乞う 2008-09-14 02:16:47
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