雨景
ヨルノテガム




この街は静寂を欲しているのか
七時半を過ぎたばかりなのに
どこも店じまいは早かった

小樽に雨が降る

札幌にも雨が降る
の予報は聞いていた

運河に雨粒は広がる
海のおだやかさにも雨が待つ
車のパーキングに雨が絨毯をしく
傘を差さない人に雨が訪れる
昨日座ったベンチの上にも
水飲み場の囲いにも

夜が雨を
街灯が雨を

軒下に雨を滴らせる
雨が売れる じゃなくて傘が売れる
傘を差す音が街中に花咲く
夜が欠伸をしている
窓がカーテンを閉める
今日が早く終わる
足音が音楽を呼び起こす
わたしの描いた言葉たちが作詞風に
綺麗に整列して調子よく 悲しみ深くなく
苦しみ深くなく 優しく伝わるように出来上がる
今日が雨でなく いや 
わたしの大好きな雨だから 詠うのさと
曇天を愛したり 
いつまでも真っ暗闇にならない街灯の光の交錯を
ありがたく思ったり。

声が聞きたいわ
歌おうとする声が懐かしいわ を
電線が音符に見えたりして
初めて聞いた音を何度も美しく装飾して養殖して
育て上げるの 夜は窓は
閉じられているから開くと音が聞こえるの
こんな夜は雨が大雨にならない
雲が手加減してくれて
夜空は白く 浮かび上がる

本当の雨はあったのか











自由詩 雨景 Copyright ヨルノテガム 2008-09-12 23:30:34
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