スーパーの朝市
オイタル
草色の風過ぎ行く早朝五時半の晴天の
スーパー○○朝市の駐車場は
車と人とささやかな諦念とで 満員
ところで不思議なことに
売り子の呼び声も客の喧騒も
皆目聞こえず ほんと聞こえず
朝市に並べられた商品は淡々と
まことに淡々と売りさばかれてゆき運ばれてゆき
西の山際に薄青い雲が
わずかに わずかにかかるばかり
わたしは女に伴って
砂糖を二つ買いに行き
余計なことに関わりあって
しかられる
砂糖をねらう一列は
風のかなたにその終わりを
なびかせて
「海苔が一缶しか残ってないから…」
「あの人も、朝早くからこっちで。…」
「こうはやいと目が回る…」
ささやき
ねぎらい
すれ違う
盛りの夏
百円玉が踏み迷い
千円札がそそり立つ
この盛りの夏の 朝市の
だからずっと見ていた
車へと戻り
頭の後ろで腕を組んで 運転席で
すねて
半ズボンのお父さん
片手に買い物籠 口にウーロン茶 含みながら 立ち去りましたよ
迷子を嫌ったか 娘の腕をしっかり握るおばさん ほら
世間話で頭がどっか
見てるよ手が離れるよ ほら
意味なく横切る小学生と
振り向いてさびしい中学生と ええっと
年老いた親子はたじろぎ
年若い兄弟はうなずき
おじとめいがさまよう
朝五時半開場の
スーパー○○朝市の
静かな 静かな喧騒にて