無日
ヨルノテガム







星が見えない
猫が通り過ぎない
草木が繁らない
子どもが声を出さない
眠らない鉛筆
眠りたがる目薬
窮屈な列車と飛行機は加速する当てがない
止まった世界へようこそ
お茶は出ない

変なこと言わないでと
夜が来ない
酒が人を飲めない
海は酔わない
波打たない
今日が苦しくない明日が来ない

目玉が一つ出て行った
角ばった骨を指でなぞると僅かに折れた
足先から何かが離れる
四肢が砂漠の小高い丘に埋まる
サングラスはある
太陽はない
呼吸はある
歯がない
こんなところにも歯科の看板はある
虫歯が絨毯にまで侵食していく

もう背中ではない
来客は訪れ間近に座り
テーブル代わりに使われ出した
ブレックファーストは豪勢に並べられ
後頭部には紅茶ポットが置かれ
一杯、二杯、三杯目と軽くなってゆくのが
ほほえましくもわかる
おしりを叩かれるとボーイがやってくるはずが来ない
歯医者がやってくる
客はすでに居ない
歯医者は糸でわたしを囲み
痛くないからと砂漠からポコペンと引っこ抜いてくれる

わたしの埋まっていた跡形はすぐに無くなっていた

星の見えない昼、風はあるようで












自由詩 無日 Copyright ヨルノテガム 2008-09-10 21:25:52
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