暗闇に敷き詰めたオレンジ
皆月 零胤
純粋ではない動機
から始まって
純粋な気持ちが
後からやっと追いついた
そんな愛のカタチは
すでに複雑に捩じれ
その崩壊を
待つだけになっていて
暗闇に少しずつ
オレンジを敷き詰めて
あなたに
朝焼けを見せようとして
名前を呼んでも
その形跡しか探せず
そんな愛のカタチは
すでに失われていたと気づく
見慣れた建物の向こう側
逃げ遅れてしまった
半分だけの月
それを見ていると
悲しみで空は崩れ
失われた愛のカタチが
頬を伝い
それを口にしてしまう
現実ばかりが
とても
苦く
置き去りの部屋では
純粋だけが空回りする
その音と
暗闇に敷き詰めた
オレンジが
彩やかすぎて
眠れぬままの意識の中
失われた愛のカタチが
蒸発して
テーブルの上に映す
想い出だけが
なぜか
甘い
空っぽに見える
コーヒーカップの
僕のほうには まだ
それが残っていて
あなたのほうのカップさえ
今は上手く片付けられずに
テーブルの上で ふたつ
まるでふたりが並んでいるよう
窓の外から差す光に
空を見上げるコーヒーカップ
今はテーブルの上からだけ
ふたりで眺めることができる朝焼け
隙間だらけのこころで
手遅れの空に見る
隙間なく敷き詰められたオレンジ