あの日の夕焼
村上 まり
夕焼を見ると思い出す。
教会の鐘が鳴り響いていたあの日を。
夕焼の記憶がなぜか東の空まで広がって、私は混乱していたことを。
時を越えてもあの時私があなた手を握らずに別れてしまったことの言い訳にはならない。
それはあなたが許してくれても私は自分自身を許せない。
「母の死に立ち会えなかった」
予告のように病床から送られてきた書き写した詩の一節。
後悔の溢れるフレーズ。
あなたに会いたい。
おかあさん。
もう一度あなたに会いたい。
どうやら私は迷っている。
どうやら私は行き先を見失っている。
どうやら私は周りの風景が見えなくなっている。
助けを求めることも。
助けを求める人も。
見失っている自分がいる。
夕焼が私を責める。