さよならの夕暮れ
オイタル

山陰から拳骨のように雲がわいた

ぼくの心は
あの夕暮れの雲の高さにある

ステテコ姿のじいちゃん
三輪車に乗るねえちゃんとおとうと

帰りましょう あのときへ
森陰に切れ切れのヒグラシの夕暮れ

停車する車の黄色いウインカーの点滅
立ち乗り自転車で不意に現れる中学生
玄関に止まった赤い車と
台所から漏れる黄色い明かり

懐かしい夕暮れは
道の辺にその花びらを満たし
薄いレモン色の花びらに

頭上を走る陸橋
ぼくは通過する電車の下をくぐって
急いで家に帰るところだ
悪いけど さよなら夕暮れ
シャボンのように空に離れた雲に手を振って
もう
明日のことさえ さよならだよ


自由詩 さよならの夕暮れ Copyright オイタル 2008-09-08 23:00:51
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