その犬
オイタル
道の真ん中で
前足に頭を乗せて死んでいる
薄目をあけて
スピードを落とす車のタイヤを見ている
右足が曲がってのびているが
気になるほどではない
話しかけると
少し顔を上げ、鳴いた
陽はしめやかに
東の空に懸かり
雲は
朱に染まるか
朝の電信柱が
道の両脇に
細い背を並べて参列する
手をつなぎあい
肩抱き合って嘆く電信柱
死亡事故抑止の看板が汚れる
夏を越えたばかりのひまわりも目を伏せる
まだその顔色を失ってはいないが
悲しげなことだ
「犬はどこへ行こうとしていたの」
「そしてこれから、どこへ行くの」
雀たちの
ささやきは止まない
犬は、黙って死んでいる
走り寄る車の下に
雀の列から逃げ遅れた一羽がもぐりこんだ