八百屋と骨
パラソル
海岸に人骨が流れついた
それは標本だった
たまたま海岸を散歩していた八百屋が
それを拾いあげた
八百屋は考えた。
「これを、店にかざろう」
八百屋は、軒先に人骨を置いた。
その日から、その八百屋には
客がパッタリと来なくなった。
ある日、八百屋は発狂していた。
「店に客がこない。店に客がこない。みせに
客がこない、店にきゃくが来ない。店に客
がこない、みせにきゃくが来ない。店にきゃ
くがこない、みせに客がこない。店に客が
こない、店に」
ずっと人骨に向かって話しかけていた。
そこへ、ガス屋が集金に来た。
ガス屋は、八百屋の異常な様子を見て、思わずたずねた。
「どうしました?ブツブツと」
八百屋は、「みせに客がこない、みせにきゃくが来ない、みせに」
といい続けた。
ガス屋は、店に堂々と立っている人骨を見た。
それから、こうささやいた。
「海に行きませんか?それから花屋に。」
そこで、ガス屋と八百屋は、なかよく連れ立って出かけ、
人骨を海に投げ捨てて、
帰りに花屋で花を買った。
そして、人骨があった場所に、花を置いた。
「これでよし」ガス屋はつぶやいた。
翌日から、だんだんと、八百屋に
客足が戻っていった。
八百屋は、野菜の売り方は知っていたが、
何をかざったらいいのか分からなかったのだ。