泥霧
いとう



あなたがたがそのように日々わたくしを名付けていくとしても
わたくしにとってまさしく霧のような
それは一寸の先も見えぬ濃霧のような
わたくしとわたくしでないものとを遮断して
穴という穴から
わたくしの内部にまで浸り
破壊していくような
たとえば憐憫にも似た
肌を舐め回すような圧迫感を
あなたがたが与えるとしても

それはすべてわたくしの屍骸なのです
あなたがたはいつも
わたくしを殺すこともせずにわたくしの屍骸を産み
それにわたくしという名前を与え
まるでそれがわたくしであるかのように
せめて
わたくしを殺してからにすれば
そのような戯れを知ることもなく
安らかに過ごせるのでしょうに

夜の明ける直前の
泥にも似た霧が
わたくしに似た影を
幾重にも作り出す
紫の東雲に映る姿が
わたくしのものであるのか
わからないまま
崩れ落ちるのが
わたくしであるのか
わからないまま




未詩・独白 泥霧 Copyright いとう 2004-07-26 18:34:47
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