アクアマリン
フユキヱリカ

 
なぜふたりでねむる
よるはあったかいの

黄金色のお月さまが
くちどけするように
やわらかく滲んでは
ひとつ、星が流れた


ああ白い
横たわるわたしの
鳩尾のしたに耳をよせ
あなたといえば
汗ばんだ肌を
何度も鼻でくすぐる

おかしいね、そこには
なにもいないというのに
乳房を捜す子猫のように
 きみは愛されるために、うまれた
そう何度もささやく

てのひらで波打際を削る
わたしの奥に流し込む、かのように


よるの底は、ほの暗い
雨垂れから次第に
怒声に飲み込まれる
あとの、また静寂

粗削りな横顔は
少年のそれに還って
わたしの肌に刻み込むように
やわらかく噛んで
黒い炎のように獰猛な
体中に降る熱い雨が
過ぎるのを待った

そうしてわたしは
 あなたのもの、になったのでしょう
波打際で転がる貝のように
ただ身を預けていた



(天国ってどこにあるの)

(だれもしらない)


かみさまが、
わたしの
肺の上に骨を埋め

白い鳴り砂のうえに
裸身のまま
打ち上げられて
このまま、泡になってしまいたい

(大丈夫、かなしまないで)

ひかりの飛沫となって
そらにのぼって
あなたを見守るの、
ずっと



なぜふたりでねむる
よるはあったかいの

(こんなにも、あなたが愛しい)

冷たい春の海にまた
星が流れ落ちていく
いたずらにほどけた
指先を、また絡めて
あわい夢をみていた




自由詩 アクアマリン Copyright フユキヱリカ 2008-09-07 03:22:11
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