林檎の幸福
しずく

無心でキャンバスに 筆をはしらせる貴方を
私はそっと見ていました
貴方に見つめられた林檎からは
つやつやとした淡い光と微かな香り
独占される幸福を身にまとい鮮やかに輝く

「終わったよ」貴方が筆を置き
その瞳は再び私に向けられました
「食べていい?」と私が林檎に手を置くと
上から貴方の大きな手が被さって
私の指ごとひと囓り
私も真似してひと囓り
貴方の瞳には林檎ではなく私の姿が映っている
蜜の甘い香りで
脳が痺れています


自由詩 林檎の幸福 Copyright しずく 2008-09-06 19:09:04
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