伝説の勇者
日雇いくん◆hiyatQ6h0c


「伝説の勇者よ、さあ目を覚ますのだ」
 連日の残業で疲れ公園のベンチで寝ていた俺は、変な男に突然起こされた。
「なんだよ」
 サンジャポに出てくる画伯みたいな顔の男だった。
 腹が立ったので殴った。
 一発。
 二発。
 それ、ワン、ツウ、スリー。

 決まった!

 すると、解説席から声がした。
「今のはいいコンビネーションですね」
 視線を一瞬声のほうに向けると、竹原慎二が目を見張っていた。
 俺は竹原のファンだったので、張り切って画伯をコーナーに追い詰めた。
 ジャブ、アッパー、そしてボディブロー。
 俺は連打に連打を重ねた。
 しかし敵もさるもの、いつまでも俺の攻撃を受け続けてはいなかった。
 いつしかガードを固め、ウェービングで俺のパンチをかわし始めた。
「……くっ!」
 苦戦し始めた時にゴングが鳴った。
 青コーナーに戻るとセコンドが俺に命令する。
「いいか、足を使え。相手はロートルだ。必ず動きが鈍る」
 見覚えもないやつに命令される義理はない。
「何言ってんだお前。俺はもう帰るぞ」
 俺はとりあえず最寄の駅に行こうとした。
「バカヤロウ、何考えてんだ、戻って来い!」
 何考えてんだと言いたいのはこっちの方だ。
 しかし、ここがどこだかさっぱりわからない。
 仕方なく俺は周囲の様子から、車の通りが多そうな道の方を探して歩いた。
 やがて国道らしい道に出ると、タクシーを拾った。
「お客さんどこまで?」
「とりあえず、ここから一番近い駅のほうに向かってください」
 言った俺は安心すると、いつのまにか眠ってしまった。
 気がつくと、俺は誰かの声で起こされていた。
 
「伝説の勇者よ、さあ目を覚ますのだ」



散文(批評随筆小説等) 伝説の勇者 Copyright 日雇いくん◆hiyatQ6h0c 2008-08-31 03:58:54
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