ロマネタリウム
ススメ

星になろうか
蛍になろうか

骨壺と帰郷してきた
あぜ道の先に鉄塔の里山
夏は盛りで
田は青くそよぐ
懐かしいともいえないぐらい
生家はそのままで
特に変わらない父が
特に変わらない顔で待っていた
縁側に腰を下ろし
家の田を見ている
夕日が稜線に最後の火を灯し
静かに帳と星が降りてくる
黒い靴下のまま縁側に寝る
思えば気の強い人だった
家族の前ではわがままな人だった
そういうところがよく似た姉も
先の庭で田を見ている
視線を灰皿に向けると
空気が不意に鳴り始めた
そして風音の先には
くらむような蛍と星の空がいた

星になろうか
蛍になろうか

やっぱり両方ね


自由詩 ロマネタリウム Copyright ススメ 2008-08-30 14:56:59
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