溢れる
佐々木妖精
蓄えを崩した時
してはいけない枷がほころび
祝福に満ちるのを感じる
崩すものがなくなるまで
私の都合を優先したいものだが
さいわいただの願望だ
快晴を望みながら蛇口をひねる
へその緒がかつて身体の一部だったと
嘆いたことがあるか
お前なんかといもしない人に振り回された件を
血を流して解決したことがあるか
自分が世の中の一部であり
交わらずとも解け込んでいたと感じた日
すれ違う人もみな笑みを浮かべていた
どこからがもみあげかなど
どうでもいい話だ
抜け毛がどんな形をとろうと
毛髪の繁みが額を規定する
スキンヘッドと首の境目について
考えたことがあるか
毛むくじゃらの獣のように
赤ん坊には顔しかない
命と私の境目について
考えたことがあるか
互いが互いから抜け落ちる瞬間
誕生と死の類似点に気付き
はじめましてとさよならが言えない